- 結論を3行で
- ARスタンプラリー事例9選の比較表
- AR型と通常のデジタル型を分けて読む
- 完走率は分母と達成条件をそろえる
- 観光地・自治体のARスタンプラリー事例
- JR只見線:51地点で完走賞応募率9.5%
- ウルトラマン福島:段階特典と地域消費を接続
- 結城市・東村山市:短い達成条件で体験を深める
- 下田:公開完走率がなくても体験価値は説明できる
- 商店街・中心市街地の回遊事例
- 熊本城・中心商店街:約2,000人を10スポットへ
- 武蔵野市:13商店会と買物券使用率93.4%
- 阿倍野・天王寺:完走33.6%と店頭周知の課題
- 企業・商業施設の参考事例
- 東京メトロ:138駅・途中集計3.6%
- 大手量販店:NFCで完走約70%
- 完走率を上げる5つの設計
- 1. 地点数と移動負担を合わせる
- 2. 序盤を軽くし段階特典を置く
- 3. 各地点に違う体験を置く
- 4. その場で達成を返す
- 5. 現地テストで運用を確認する
- 成果を比較できるKPIと計測方法
- 参加・回遊・完走・成果を4段で残す
- 業種ごとに成果KPIを変える
- ROIは公開値だけでは比較できない
- よくある質問
- ARスタンプラリーの完走率の目安は?
- ARは必ず入れた方がよいですか?
- 何地点にすると参加しやすいですか?
- 相談時に何を決めておけばよいですか?
結論を3行で
ARスタンプラリーの成功事例は、完走率の数字だけを並べても正しく比較できません。51地点をすべて巡る施策と、店内の数地点を回る施策では、同じ「完走」でも参加者の負担が大きく違うためです。

- 観光地は完走率と再訪、商店街は複数店舗への回遊と来店、企業施策は購買・特典利用まで、目的に合う成果指標で判断する。
- 公開事例には、公的な実績、主催者の試算、途中集計、匿名のベンダー発表が混在する。数値の出所と条件を外して順位づけしない。
- ARは「その場所でしか得られない体験」を作るときに効く。来店証明やクーポン配布が主目的なら、QRやNFCだけのデジタルラリーも候補になる。
事例比較で最初にそろえるべきなのは、成功という言葉ではなく、分母・地点数・達成条件・集計時点です。
ARスタンプラリー事例9選の比較表
観光・自治体、商店街、企業・商業施設の公開事例を、同じ項目で整理します。AR演出を含む5件に加え、成果の比較対象としてQR・GPS・NFC型のデジタルスタンプラリー4件も載せています。

| 区分・事例 | 方式 | 地点・達成条件 | 公開された成果 | 出典と読み方 |
|---|---|---|---|---|
| 観光|JR只見線 | AR | 51地点・全地点 | 参加589人、完走賞応募56人(編集部計算9.5%) | 福島県の事業評価。応募しなかった完走者は含まれない |
| 観光|ウルトラマン福島 | AR | 60地点・6/20/60段階 | 6地点約2,800人、60地点約632人(条件付き22.6%) | 翌年度仕様書の参考試算。全参加者を分母にした完走率ではない |
| 観光|結城市 | AR | 6地点・3地点で仮ゴール | 達成率45.5%、3地点取得者の80%以上が6地点完走 | 提供会社の公開ケーススタディ |
| 自治体イベント|東村山市 | AR | 3地点 | 来場約800人、316人・117端末参加。世帯40%、人数14% | 提供会社のログ分析。平均表示5.3地点 |
| 中心市街地|熊本城・商店街 | WebAR | 10地点・5地点で特典 | 参加者約2,000人 | 熊本市資料。完走数は非公開 |
| 商店街|武蔵野市 | デジタル | 13商店会 | 参加1,240人、応募1,622件、買物券使用率93.4% | 東京都事例集。応募は人数と同一ではない |
| 中心市街地|阿倍野・天王寺 | デジタル | 11地点・全地点 | 参加554人、完走186人(33.6%) | 大阪府実績報告。店頭周知に改善余地 |
| 企業|東京メトロ | デジタル | 138駅・6駅/全駅 | 登録20,473人、全駅736人(途中集計3.6%) | 開始約3か月時点。最終値ではない |
| 商業施設|大手量販店 | NFC | 複数売場・全地点 | 完走約70%、回遊・特典利用90%以上 | 匿名のベンダー発表。地点数・参加人数は非公開 |
AR型と通常のデジタル型を分けて読む
AR型は、地点へ着いた証明に加えて、キャラクターの出現、歴史の再現、クイズ、写真撮影などを体験に組み込みます。QR・GPS・NFC型は、訪問確認やクーポン配布を短い操作で実現しやすい方式です。本記事では後者を「参考ベンチマーク」と明記し、ARを使った成果と同一視しません。
完走率は分母と達成条件をそろえる
完走率は原則として「達成者数÷参加開始者数」で計算します。ただし、参加開始を登録、最初のスタンプ取得、アプリ起動のどれで数えるかによって値が変わります。さらに「全地点」「任意5地点」「景品応募」も別の行動です。公開値の空欄を推測で埋めず、算出できない場合は非公開と書くことが、信頼できる比較の前提です。
観光地・自治体のARスタンプラリー事例
観光地では、広域を回る理由と地域固有の体験を両立できるかが中心課題です。公開数値を見ると、地点を増やすだけでなく、中間ゴール、物語、撮影、飲食連携を組み合わせた施策に学びがあります。

JR只見線:51地点で完走賞応募率9.5%
福島県の「JR只見線魅力再発見ARスタンプラリー」は、2022年9月15日から11月30日まで51地点で実施され、参加589人、AR読み込み12,623回、全地点のコンプリート賞応募56人と報告されています。56÷589は9.5%ですが、これは当社による計算であり、正確には「参加者に対する完走賞応募者の割合」です。完走して応募しなかった人がいれば、実際の完走率より低く出ます(出典:福島県 事業評価資料、2026年8月3日閲覧)。
一方、AR読み込みは参加者1人当たり約21.4回です。51地点すべてには届かなくても、多くの地点で体験されたことが分かります。広域観光では完走だけでなく、平均取得数やエリアをまたいだ移動も成果に置くべきです。
ウルトラマン福島:段階特典と地域消費を接続
2025年の「ウルトラマンARスタンプラリー in ふくしま」は60地点を設け、6・20・60ポイントの段階で特典を用意しました。翌年度の県仕様書に載る参考値は、6ポイント到達約2,800人、20ポイント約2,100人、60ポイント約632人です。632÷2,800は約22.6%ですが、分母は全参加者ではなく「6ポイント到達者」なので、完走率とは呼べません(出典:福島県 2026年度業務委託仕様書、2026年8月3日閲覧)。
注目点は、13種類のコラボメニュー用シールが計9,356枚配布されたことです。ARの収集体験を飲食へ接続すると、回遊を地域消費へつなげる観測点を作れます。ただし配布枚数は売上そのものではないため、POSや券使用額と組み合わせて評価します。
結城市・東村山市:短い達成条件で体験を深める
結城市のストーリー型ARスタンプラリーは、3地点で仮のエンディング、6地点で完全な体験という二段構成です。公開ケースでは達成率45.5%、3地点を集めた参加者の80%以上が6地点を完走し、再参加意向89.6%とされています(出典:COCOAR デジタルスタンプラリー事例、2026年8月3日閲覧)。序盤の小さなゴールが、最後まで巡る動機を保った可能性があります。
東村山市の親子向けAR化石発掘イベントは、来場約800人に対して316人・117端末が参加しました。家族1端末が多く、世帯では約40%、人数では約14%です。3地点でクリアできる設計に対して平均表示は5.3地点、435表示に対する撮影は119回(30.1%)でした(出典:COCOAR 東村山市ケーススタディ、2026年8月3日閲覧)。家族施策では端末数だけでなく、同行者を含む人数も分けて残します。
下田:公開完走率がなくても体験価値は説明できる
TOBIDASEが制作した下田港内めぐりARは、遊覧船上で全長78mの黒船を原寸大で出現させる単地点のWebARであり、スタンプラリー事例ではありません。公開できる完走率もありません。一方で、QR起動から黒船出現、ペリー提督の演出までを航行時間に合わせた設計は、各地点に「到達する理由」だけでなく「体験する理由」を置く参考になります。

観光AR全体の実例は自治体AR活用事例まとめ、観光地での周遊企画は観光地のARスタンプラリー導入ガイドで詳しく解説しています。
商店街・中心市街地の回遊事例
商店街の成果は「参加者が多い」だけでは足りません。複数店舗へ足を運び、券やクーポンが使われ、店頭オペレーションが無理なく回ったかまで見る必要があります。

熊本城・中心商店街:約2,000人を10スポットへ
熊本城から中心商店街をつないだ2024年のARスタンプラリーは、79日間、10スポットで実施され、5スタンプで特典交換・抽選へ進む設計でした。熊本市の観光戦略アクションプランでは参加者約2,000人とされています(出典:熊本市 観光戦略アクションプラン、2026年8月3日閲覧)。
完走数は公開されていないため、約2,000人を完走者と扱うことはできません。この事例の判断材料は、観光拠点と商店街を一つの10地点ルートにし、全地点ではなく5地点で特典へ届くようにしたことです。
武蔵野市:13商店会と買物券使用率93.4%
「むチューdeデジタルスタンプラリー第二弾」は、13商店会を横断して参加1,240人、特典応募1,622件、LINE新規登録197人、写真投稿165枚を記録しました。商品のお買物券使用率は93.4%です(出典:東京都 第18回東京商店街グランプリ事例集、2026年8月3日閲覧)。
応募は複数回できるため、1,622件を参加人数や完走人数へ置き換えられません。また、買物券使用率が高くても、発行総額と通常時との差がなければ増分売上は計算できません。ここで評価できるのは、回遊施策から店頭利用まで測る導線を用意した点です。
阿倍野・天王寺:完走33.6%と店頭周知の課題
2021年の「あべの天王寺・サマーキャンパス」は、商業施設・商店会の11地点で参加554人、全地点達成186人、完走率33.6%でした。実績報告には、店舗スタッフへの抽選案内の周知不足により抽選参加が想定より伸びなかったという改善点も残されています(出典:大阪府 地域活性化事業実績報告書、2026年8月3日閲覧)。
デジタル画面が正しくても、ゴール地点のスタッフが次の手順を案内できなければ成果は落ちます。店舗説明をA4一枚に絞り、参加開始、エラー時、達成後の3場面だけを事前共有する運営方法は、商店街デジタルスタンプラリーの少人数運営ガイドで確認できます。
企業・商業施設の参考事例
企業施策では、広い施設や路線を回る挑戦型と、店内で短時間に購買へつなぐ販促型で完走の意味が変わります。ARに限定せず、難易度の両端にある公開値を参考にします。

東京メトロ:138駅・途中集計3.6%
東京メトロ全駅デジタルスタンプラリーは138駅を対象に、2022年4月から2025年2月までの長期で実施されました。開始約3か月時点の公開値は、登録20,473人、6駅達成8,028人、全駅達成736人です。登録者を分母にすると、6駅達成39.2%、全駅達成3.6%になります(出典:東京メトロ Newsletter 2022年7月号、2026年8月3日閲覧)。
これは途中集計で、最終完走率ではありません。138駅を巡る長期企画は、完走者の比率を高くするより、6駅の中間達成から繰り返し乗車へつなぐ設計と読む方が適切です。
大手量販店:NFCで完走約70%
Supershipが公表した大手量販店の先行事例では、NFCタグへスマートフォンをかざして売場を巡り、参加者の約7割が全スタンプを集めて特典を利用しました。次のチェックポイントへ移動した割合と、発行特典の利用率はいずれも90%以上です(出典:Supership 2026年3月17日発表、2026年8月3日閲覧)。
一方、企業名、参加人数、地点数、期間は非公開です。短距離の店内施策と広域観光を比べる根拠にはせず、「カメラ起動を省くワンタッチ操作」「達成直後にその場で使える特典」という設計の参考にします。
完走率を上げる5つの設計
公開事例から再利用できるのは、数字そのものより設計の条件です。地点数、序盤、中間特典、体験差、現場運用の5点を、対象者の移動時間から逆算します。

1. 地点数と移動負担を合わせる
同じ6地点でも、会場内と車移動の観光地では負担が違います。短時間イベントなら3〜5地点、街歩きなら3〜8地点を出発点にし、各地点の営業時間、坂道、信号、休憩、雨天時の移動まで含めて所要時間を測ります。広域で地点を増やすなら全制覇だけをゴールにしません。
2. 序盤を軽くし段階特典を置く
結城市は3地点で仮ゴール、6地点で完全達成、福島は6・20・60地点の段階特典を設けました。最初の1地点を入口の近くへ置き、少数取得でもデジタル壁紙や参加賞を渡すと、参加者は操作を理解した状態で次へ進めます。中間達成者数も残せるため、全完走だけでは見えない離脱箇所を判断できます。
3. 各地点に違う体験を置く
同じスタンプ画像を繰り返すだけでは、最短で収集する作業になります。歴史人物が語る、キャラクターが変化する、商品知識のクイズが出る、写真フレームが解放されるなど、次の地点で得られるものを変えます。ARは訪問を証明する機能ではなく、次の場所へ行きたくなる理由を作るために使うと投資目的が明確になります。
4. その場で達成を返す
読み取り後は、スタンプ獲得、現在数、次の候補、達成特典を同じ画面で返します。量販店の事例では、全スタンプ後にその場で使える特典へ接続しました。後日応募だけにすると、現地で生まれた購買意欲が途切れます。景品発送が必要な場合も、参加中は個人情報を取らず、達成後に必要項目だけ入力させます。
5. 現地テストで運用を確認する
公開前に実際の端末で全ルートを歩き、通信、GPS誤差、日差し、QRの高さ、混雑、休業店舗を確認します。阿倍野・天王寺の報告が示すように、画面外の案内も成果を左右します。店頭担当者が入れ替わっても対応できる説明資料、代替地点、問い合わせ先を用意します。
成果を比較できるKPIと計測方法
次回に使える事例を作るには、開催前にデータ項目を決めます。参加から成果までを4段に分けると、「集客はできたが回らない」「回ったが購買しない」のどこに問題があるか分かります。

参加・回遊・完走・成果を4段で残す
最低限、①参加開始者数、②参加者ごとの地点取得数と順番、③達成条件別の人数、④特典交換・クーポン利用・アンケート結果を残します。家族参加では端末数と人数、再参加可の施策ではユニーク参加者と延べ参加を分けます。計算式と集計時点も報告書に書けば、翌年と比較できます。
| 段階 | 代表KPI | 分かること | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 参加 | ユニーク開始者、参加率 | 告知と入口の強さ | 登録だけと1地点取得を分ける |
| 回遊 | 平均取得数、地点別到達率、移動順 | 動線と人気・離脱地点 | 同一地点の再読み込みを除く |
| 完走 | 条件別達成率、特典交換率 | 難易度と景品導線 | 全地点と中間達成を分ける |
| 成果 | 券利用、購買、再訪、満足度 | 事業目的への貢献 | 通常時や非参加者との比較が必要 |
業種ごとに成果KPIを変える
観光地は平均訪問地点、エリア間移動、滞在時間、再訪意向を中心にします。商店街は複数店舗訪問率、買物券・クーポン利用、レシート件数、参加店舗の新規客実感を見ます。企業・商業施設は商品棚への到達、会員獲得、特典利用、対象商品の購入まで接続します。完走率の設計と改善は周遊型イベントのKPI設計も参考にしてください。
ROIは公開値だけでは比較できない
投資回収率には、システム・AR制作・景品・告知・運営を含む総費用と、施策がなければ生まれなかった増分利益が必要です。公開事例の参加者数や券使用率だけでは、ROIを算出できません。まずクーポン利用額や対象商品の粗利、通常期間との差を残し、ブランド認知や再訪は別指標として報告します。
予算の目安はARスタンプラリーの費用相場、AR施策全体の発注判断はAR制作の費用相場で確認できます。
よくある質問
発注前に決めるべき項目を、完走率、ARの必要性、地点数、相談準備の4点に整理します。

ARスタンプラリーの完走率の目安は?
全施策に使える一つの平均値はありません。本記事の公開値でも、11地点33.6%、51地点の完走賞応募9.5%、138駅の途中集計3.6%、店内の匿名事例約70%と条件が大きく違います。自社では地点数、会期、達成条件が近い過去施策を基準にし、初回は地点別到達率を残して改善します。
ARは必ず入れた方がよいですか?
必須ではありません。キャラクターとの撮影、歴史の再現、商品理解、物語の進行など、地点ごとに体験価値を変えたい場合はARが向きます。来店確認とクーポン配布を最短操作で行うことが主目的なら、QR・GPS・NFC型を比較します。
何地点にすると参加しやすいですか?
短時間イベントや初回検証では3〜5地点、街歩きでは3〜8地点が始めやすい範囲です。広域・長期で増やす場合は、任意地点や中間特典を設けます。数字だけで決めず、対象者が実際に歩く時間、休業、天候、交通手段を現地で確かめます。
相談時に何を決めておけばよいですか?
「増やしたい行動」「対象者」「候補地点」「測りたいKPI」の4点があれば、技術仕様が未確定でも相談できます。ロゴ、キャラクター、写真、3D、景品候補など既存素材があれば、見積もりの精度も上がります。
TOBIDASEでは、観光地・商店街・企業イベントの目的整理から、回遊ルート、WebAR体験、現地テスト、地点別ログの設計まで一貫して支援します。公開事例の数字をそのまま目標にせず、対象者と現地条件に合う小さな検証から設計します。